Google トレンドは2006年に公開されたサービスですが、Googleによる英語のドキュメントは公開されているものの、日本語で詳細に解説しているサイトは少ない印象でした。
既存の日本語のサイトも、概ね「トレンドの推移が検索できる」程度の説明しかなく、数値の意味や見方にまで深くは言及していないようです(その程度の理解で問題ないかもしれませんが)。
なお、基本的に、本記事はGoogle本家の英語サイトを基に分かりやすく(したつもりで)解説しただけです。より正確な情報がほしい方は、以下のサイトをご覧下さい。
- Trends Help (Googleによるヘルプ)
- What is Google Trends data — and what does it mean? (Simon Rogers, 2016/7/2)
Google トレンドとは?
関心の傾向や有無を、実際にGoogleで検索されたデータを通して見ることができるもの。
主な特徴を箇条書きにすると、以下の通り。
- 全ての検索データではなく、ランダムにサンプリングされた標本データを扱う
- データは匿名化、カテゴリー化、集約化されている
- 場所は全世界、都市ごとに確認することが可能(各地域ごとの傾向を見ることが可能)
- 大きく、「調べる (Explore)」と「急上昇ワード (Trending searches)」に分けられる
- 複数のキーワードを比較可能
無作為な標本データを使用する理由は、そうしないとデータ量が膨大で処理できないからだそうです。
本筋の話題ではありませんが、データにはリアルタイムデータ(Real-time data)とそうでないもの(Non-realtime data)、の2種類が存在。前者は過去7日間のデータ。後者は、2004年から36時間前までのデータ。
要するに、Googleの膨大な検索要求データを基に、全世界はもとより各地域、都市ごとに、関心の有無・傾向・推移が分析できるツールです。
具体的な実例
過去30日(8/15〜9/15)の日本で、「首相辞任」というキーワードで見てみます。
安倍総理大臣の辞任が報じられたのは8/28ですが、ちょうどその日に関心が集中していたことが確認できます。そして、他の日には一切関心が寄せられていなかったことも分かります。
※ 安倍首相 辞任の意向固める 持病が悪化したことなど理由に(NHK, 2020/8/28)
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以下は、8/15〜9/15の期間で「台風」で検索した時の地域差。前回の台風が沖縄・九州に接近したため、特定の地域でトレンドが高いことが分かります。
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余談ですが、↓のようにサイトに埋め込むことも可能(今見ている日から30日前までのデータが出ます)。
※ ブラウザによっては表示されない可能性があります。
Google検索されたデータを基に、該当期間に何らかの理由で、あるキーワードに注目が集まっていた、ということが分かります。
数値の見方
関心の指標は、0〜100までの数値で表現されます。これは、全トピックの全検索に対する相対的な割合(100が最も関心が高い)。
また、各データ地点(Each data point)はその地域の全検索と期間の範囲で除算されます。要するに、各地域で見る場合は、各地域の相対的な数値が示されます。このように数値を正規化して比較しないと、検索量の多い地域が常に突出してしてしまうため。例えば、インターネット人口の多い地域は検索の量が多いので、他の地域と単純に比較できませんね。現在と過去を比較する場合も同様のようです(2004年は今よりも検索の量がそもそも少ない)。
注意点など
除外されているデータ
Google トレンドでは、以下のデータは除外されます。
- 僅少な量の検索データ(ゼロとして扱われる)
- 重複した検索(短期間に同一人物が行った検索)
- アポストロフィなど特殊文字
数値を見る際の注意
世論や世論調査と同様ではないことを、わざわざ公式も書いています(*1)。
Google トレンドのデータはあくまで何らかの理由で多数のユーザーが検索したという事実を示すだけで、”pupular”とか”winning”とは言えず、結論を導き出すためのデータの1つに過ぎないと考えるべき、だと。
これは重要なことで、「あくまでGoogleでよく検索されたキーワード」であることは念頭に置いた方がよさそうです。
*1 Is Google Trends the same as polling data?
他のサービスとの違い
オートコンプリート(検索窓で入力している最中に予測候補が出てくる、アレ)機能で出現するキーワードは、Google トレンドのものとは異なります。
オートコンプリートは、ユーザーの場所や以前の検索に関連して表示され、また、削除ポリシーに違反しているものは出現しません。
また、Google AdSenseのデータとも異なるため、他のサービスのデータセットとは単純に比較できない模様。
Google トレンドの使い方
大きく、「調べる」と「急上昇ワード」があります。
習うより慣れろですが、簡単に。
「調べる (Explore)」
キーワードを入れるだけです。
必要に応じ、地域、期間、カテゴリ、検索の種類(ウェブ、画像、ニュースなど)を選択します。
「covid19」を調べると、以下の感じ。
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複数の比較も可能です。
日本の1年間で、「タケノコ」「松茸」を比較すると、やはり、それぞれ旬の時期に検索されているようです。
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キーワードでも検索できますが、トピックでも検索可能。
Webシステムの開発でよく利用されるVue.js、Reactの、世界的な傾向を見てみます。
台湾、中国、日本で特に関心を持たれていることが分かります。
開発者が中国の方であることもあるせいか、実際にVue.jsはアジア圏で人気のようです。
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上でも説明しましたが、各データはscriptタグにして、サイトに埋め込むことが可能。
また、CSVデータのダウンロードも可能です。
急上昇ワード(Trending searches)
「毎日の検索トレンド」と「リアルタイムの検索トレンド」があります。
毎日の検索トレンド (Daily search trends)
過去の24時間以内に急上昇したもの。1時間ごとに更新されます。
日ごとの関心と、その比較が可能。
岸部一徳さんのニュースに関心が集中しているようで、少し意外でした。
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リアルタイムの検索トレンド(Realtime search trends)
最新の全検索について急上昇したものが見ることができるもの。公式によると、Knowledge Graphのトピック、検索の関心、Googleニュースを独自のアルゴリズムで集約したもの、だそうです。
(※ Knowledge GraphはGoogleの技術で、検索と現実のもの・場所を結びつけるものらしい)
実際のページを見ると分かりますが、関心の動向と現実のニュースを合わせて見ることができます。また、カテゴリーごとに表示可能。
一覧で表示されますが、リストの各項目をクリックすると以下のようになります。
灰色の棒グラフはGoogleニュースの記事数で、右の軸と対応。
青い線グラフはGoogle検索で、左の軸と対応。上で説明した通り、相対的な指標です。
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こんな感じで、同じトピックについての、現実のニュースと検索の動向を比べて見ることが可能。
対象の国を選ぶことも可能。
Google トレンドの活用法
ほぼ上で述べた通りですが、
- Google検索のデータを基に関心の推移を見る
- 何が関心を持たれているか比較・分析に使えそう(どの製品がよく使われていそうか?など)
- 地域差(国・都市)の比較
- 今、何がよく検索されているか
- など
「Google検索からトレンドを知る」ことはできそうですが、上でも書きましたが、注意が必要です。
数値はあくまで「Googleで頻繁に検索された」ことを示すのみですから、それを基に「人気である」とか「誰もが感じていること」だと結論づけるのは早計で、吟味する必要があります。
例えば、「不安」のキーワードが2004年から右肩上がりに増加していから「不安を感じる人が増えている」と考えるのは結論を急ぎすぎで、吟味が必要です。「安心」は不安の対義語になると思いますが、これも同様に右肩上がりの増加です。また、だからと言って「不安を感じる人」と「安心を感じる人」が両方とも増加したと結論を出すこともできないでしょう。「不安」に関しても、何に対して不安を感じているのかも掘り下げる必要がありそうです。
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大事なポイントは、あくまでGoogleで、どのトピック・キーワードが検索されかが分かる、ということだと思います。
以上です。
アイキャッチ画像は、PixabayのHoang Nguyemさんのものから。